2012年6月10日日曜日

2012年6月5日火曜日

子どもの中耳炎


はじめに

中耳炎を繰り返して耳鼻科へ通院しているお子さんがたくさんいらっしゃることと思います。
「餅は餅屋」という諺があるがごとく「耳は耳鼻科へ」がよいのでしょうが、風邪に伴って中耳炎を併発することは日常茶飯事ですから、なんとか小児科医も中耳炎診療ができないものか・・・と日々考えてきました。

私が小児科医になった昭和の終わり頃は「中耳炎=細菌感染症=抗生物質で治療」という時代でした。
つまり、中耳炎と診断されると抗生物質が処方されるのが当たり前。
長らくそれが常識だったのですが、ここ10年くらいで様子が変わってきました。
「ウイルスによる中耳炎もあるらしい。」
「抗生物質に聞かない細菌が増えてきた。使い過ぎ?」
とこんな声が聞かれるようになりました。
そして2000年以降、小児の中耳炎治療ガイドラインが小児科と耳鼻科から相次いで発表され、新たな時代を迎えた感があります。
先日ふと読んでいた医学雑誌に下記文章を見つけました。耳鼻科の先生が書かれたものですが、現在の状況をよく表していると思います:

「細菌感染が主体と考えられていた急性中耳炎だが、最近ではウイルス感染がその発症に関与していることが判明してきた。日本では急性中耳炎の治療に抗生物質を安易に使用してきた経緯があり、それが主要な起炎菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌の薬剤耐性化と、それによる急性中耳炎の重症例増加の大きな要因と考えられている。その反省から抗生物質使用の見直しが勧められており、急性中耳炎がウイルス性なのか細菌性なのかを識別し適切な治療を選択することは、非情に重要な課題である。」

というわけで、中耳炎の治療をめぐって色々な問題がありそうです。
私なりに調べ、自問自答した結果を以下に記してみました。

子どもの中耳炎の特徴

子どもは大人より中耳炎に罹りやすい事実は古くから知られています。
生後1歳までに60%、3歳までに80%の子どもが少なくとも1回は急性中耳炎に罹ると言われています。
その理由として以下の要因が指摘されています;
・中耳の解剖学的構造
・免疫力の未熟性
・母乳保育の低率化
・母親の喫煙率増加、など

特に2歳未満の乳児は一度罹ると反復しがちです。
たいてい保育園(風邪のるつぼ)に預けている子どもですね。
この時期に耳鼻科通院が始まるとエンドレス。
私はこの現象を「耳鼻科のアリ地獄」と呼んでいます(決して耳鼻科の先生の責任ではありません)。
2歳未満児では免疫力が未熟なので、この時期に集団生活を始めると風邪を引きがちです。
喉・鼻は炎症を反復して常にダメージを抱えている状態なので、病原菌が増えやすい条件が揃っていて悪循環から抜け出せません。さらに保育園には薬剤耐性菌が蔓延しているので、治療にも難渋します。

院長のつぶやき)かくいう私自身も幼児期に中耳炎を反復し、耳鼻科の常連でした。鼓膜切開とか、吸入とか、やったなあ。シュッと鼻の中に吹き付ける霧(実は血管収縮剤)がしみてイヤなんですよね。扁桃腺を取る取らないという話になり「手術は怖いからどうしよう・・・」と両親が迷ったあげく、結局取らずに今も大きめの扁桃腺が喉に鎮座しています。耳鼻科の椅子に座ると自分が医者であることを忘れてすっかり患者の気分になってしまいます。

風邪と中耳炎の微妙な関係

まず、誤解されがちな風邪と中耳炎との関係からお話しします。
風邪と中耳炎は全く別の病気というわけではありません。
なにせ、喉と耳はつながっていますから。
風邪の原因の90%はウイルスですが、ウイルスが増殖して喉に炎症を起こすと、常在菌のバランスが崩れて細菌が繁殖する傾向があります。
その菌が「耳管」(喉の奥と耳をつなぐトンネル)を通って耳に辿り着き、そこでさらに増殖して炎症を起こすのが中耳炎です。
ですから実際には「風邪を引いて数日経過後に中耳炎を合併することがある」というケースが多いのです。
風邪症状がないのに「耳が痛い!」と訴えることはあまりありません(例外はありますけど)。

院長のつぶやき)風邪を引いて小児科で薬をもらったけど、熱が下がらなくて耳を痛がるので耳鼻科へ行ったら中耳炎と診断された・・・あの小児科はヤブ医者だ!と小児科医を責めないでくださいね・・・中耳炎は風邪の途中から合併するのです。

中耳炎の起こるメカニズムと病原体について

前項の内容は私が学生時代に受けた講義の内容。
じつは、中耳炎の解説はこれだけで終わらないことが最近わかってきました。
ウイルスそのものも耳管を通って中耳炎を起こすことが判明したのです。
つまり中耳炎が起きるメカニズムは次の2通り存在することになります;

1.ウイルスが直接耳管を通って中耳へ侵入する場合
2.ウイルスが耳管や中耳の粘膜障害を引き起こすことにより鼻の奥にいた細菌が中耳に侵入して細菌性中耳炎に進展する場合

まずウイルス感染ありきで、その上に細菌が便乗して悪さすることがあるということになります。
しかし従来は急性中耳炎の原因は「細菌」でありウイルス性中耳炎の存在は知られていませんでした。
なぜでしょう?
実は検査技術が未熟だったためにそこにいるはずのウイルスが見つからなかったのです。
悲しい理由ですね。
歴史を少し紐解くと・・・

2012年6月4日月曜日

日本とカナダの出産・子育て事情比較 - カナダde日本語


1.出産医療体制が整っていない。
(厚生労働省による診療報酬引き下げで、医師不足、病院不足)

医療崩壊で、医師不足、病院不足の現状は、「妊婦たらいまわし事件」などで、あまりにも有名なので、特に説明の必要もないだろう。

参考: 医療崩壊・出産難民・医療における「たらい回し」

2.出産費用が高いわりに補助金が少ない。

日本での一般妊婦の出産費用は全国平均で42万円かかるといわれている。人件費の高い東京都の場合は50万円以上は楽にかかるだろう。が、妊婦1人当たりの全国平均の補助額(2006年度)は30万5807円とか。 『入院助産制度』は、自治体が認定した病院や診療所に限り低所得者の妊婦が利用できる仕組みだが、厚労省によると、利用者は5162人。10年前に比べ2400人増えているのに対し、受け入れる医療機関は480か所。10年前より83か所減っている。ちなみに、カナダでの出産費用や妊婦権診療は、全て無料。

3.子育てのための補助金がない。

日本でも児童手当はあるが、小学生以下の児童1人につき月額5,000円または10,000円で、欧米に比べて額が低く支給期間も短い。しかも、所得制限がある。

カナダでは、いろいろな種類の子供手当てが子供が生まれてから18歳になるまで毎月支給される。例えば、手元にある"Canada Child Benefits 2007−2008"という資料によると、子供のいる家庭が受け取ることのできる基本的な補助金として、子供1人あたり、$106.91が支給される(一家の年収が、$37,178、日本円で約400万円以上の家庭では、子供1人あたりの子供手当ては2%削減される)。

注)アルバータ州ではまた違った基本的な補助金額が支給される。

その他に、National Child Benefit Supplement(NCBS)という補助金もあって、こちらでは、第一子には、月$164.66、第二子には、$146.50、第三子には、$139.41が支払われる。こちらは、より貧しい家庭用に追加される補助金らしく、年収が$20,883(約250万円)以上では、子供一人当たりの補助金から12.2%が削減される。このほかにも、障がい児には、一人当たり、$195.91が支払われる。

これ以外に、一家の年収が$20,000以下の家庭には、各州ごとに補助金が支給される。ちなみに私の住むオンタリオ州では、子供一人当たり、$250が支給される。

これらをまとめると、年収が約200万円以下のオンタリオ州に住む母子家庭には、月に$522.57、つまり子供1人当たり5万円が支給されるということ� ��。2人いたら、約10万円となる。このほかにも、母子家庭手当てなどの補助金が支払われる。

4.日本の企業では、産休、育児休暇がとりにくい

日本では育児休暇に対しても、否定的な見方があって、出産や育児休業の取得を理由に解雇されたとする相談が、中国地方の労働局に相次いでいるそうだ。カナダで出産や育児休業を理由に解雇するような会社があったら、たちまち大きな問題になる。

カナダでは夫婦の共働きが定着している為、一定期間の必要就業期間を満たしていれば、出産時に1年間の産休が保障されており、その期間は給料も一部支払われる。本人が希望しない限り、女性は結婚・妊娠したからといって、職場から退職を求められるという事はない。そして、大抵のカナダ人男性は� �が出産する時、1ヶ月から6ヶ月ほどの産休をとり、産後間もない妻や生まれたばかりの赤ちゃんの世話をすることができる。

だから、これまで子育てのために何の補助金もなかったのに、衆院選前になると、民主党の政策を中途半端にパクった補正予算としての「子育て応援特別手当」を提案した政府・与党に対して、西村議員が、疑問を呈したのはもっともだと思われる。

これでは日本で、少子化が進むのも当然だろう。民主党の西村智奈美議員が麻生に訴えたように、日本の社会全体が子育てに優しくないのだ。出産や育児休暇に対する雇用規制などもめちゃくちゃだし、出産費用も高く、補助金も少なかったら、出産できるのは、女性が働かなくてもいい富裕層だけになってしまうのは当然だ。

2012年6月2日土曜日

うつ病


うつ病

                    

「うつ病」

 うつ病の典型的な症状は抑うつ感ですがそれに伴い精神的活力の低下、不安焦燥
感、自律神経の失調などがあげられます。自責感、絶望感、悲壮感などにさいなまれて
しまうと、からだも機能停止状態になります。社会全般のストレス重圧が強くなるにつれ
て、うつ病は子供から老人まで広い年齢層にみられます。全国の患者数は推計360万人
以上と言われています。最近になってうつ病は誰もが罹る「心の風邪」だからもっと気軽
に受診しようという風潮が高まってきました。事実、街なかにも精神科、心療内科などそ
れに類するクリニックが増えてきました。しかし、うつ病に関する情報が身近に増えた事
で自分がうつ病だと思いこむ人が増えたのも事実です。うつ病は明らかに脳内の神経伝
達物質の変調が原因であり、日常的な心身の不調とは質的にまったく違う事を認識しな
ければなりません。

うつ病は脳の心身症

 病気の多くはストレスと深い関係があります。ストレスは消化器系、循環器系をはじめ
身体各部に機能的、器質的疾患を起こします。心因的なものと非常に関係の深い疾患
を心身症という括り方をしますが、うつ病も脳に起こった心身症といえます。うつ病は心
の病気ではありますが脳が長期的に受けたストレスの結果、脳内神経伝達物質のカテ
コールアミン(ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなど)やインドールアミン(セロト
ニンなど)の刺激伝達機能が上手く行かなくなっている事がわかっています。体質的に脳
内の神経伝達物質の代謝や機能に弱点のある人が、社会的環境、心理的ストレス、肉
体的変化(思春期、更年期、老化)などの慢性ストレスによって代謝が上手く行かなくなり
自律神経障害を含む身体・精神症状が起こると考えられています。脳は使う事で機能が
強化されます。思考の傾向で不安や怒りの感情を持ち続けるとそれらを司る中枢(帯状
回や扁桃)が刺激され続け強化されてしまうのです。一方、明るい思考を持ち続ければ
それを司る中枢(側座核や中隔核)が強化されます。つまり日ごろの思考パターンや感情
そのものが脳の回路パターンを作るのです。

うつ病の見分け方